内藤あゆ
清川由香子
席披きの茶会へ
「自宅につくったお茶室で、友人たちを招いて初めて茶会を開きます。是非、お越しいただけないでしょうか。」
ある日、こんな嬉しいメールがJoiさんの長年の友人から届きました。
聞けば、築100年の母屋の古材を活かして新しく茶室をつくったけれど、なかなか茶会を開くまで至らず、もう10年も眠っているとのこと。Joiさんが茶道に取り組んでいる話を聞き、息を吹き込んでほしいと思ったそうです。
席披きという華やかな席のお招きは初めてのこと。嬉しさと緊張が入り交じるなか、お宅へお伺いすると、にこやかにご亭主とご家族が迎えてくださいました。
風情のある中雀門をくぐると、鮮やかな緑が導いてくれます。そこには、都会の中心地とは思えないほど、ゆったりとした時間が広がっていました。
みなさんとのご挨拶のあと、和やかな雰囲気で茶会が始まりました。
お菓子は和菓子所太市さんのきんとん。美しい色合いが、先ほど庭で見た新緑を思い起こさせます。
本日のお道具はすべてご亭主のお母様が遺してくれたものだと言います。優しく柔らかな意匠から、お人柄が忍ばれました。
「よろしければ、Joiさんもぜひお点前をなさってください」
ご亭主のその一言に、一瞬戸惑いを覚えたようですが……。せっかくの機会ですので、Joiさんから皆さまに一服差し上げました。
茶会の後、居間へと足を運ぶと、そこには母屋の面影を色濃く残す、歴史を感じさせる空間が広がっていました。古材を活かし移築された部屋は、まるで時間が止まったかのような趣きです。

古い梁や柱、障子など、先代から受け継がれてきたものを大切に守り、使い続ける──。
ご亭主の”物への慈しみ"が伝わってきました。
ご家族皆さまの温かいおもてなしと、思いの詰まった空間が織りなす今回の茶会は、まさに至福のひととき。茶室の門出に立ち会えたことを光栄に思うとともに、茶の湯の奥深さと、そこに込められた想いを再認識する、忘れがたい一日となりました。
写真:内藤あゆ
文:清川由香子