First Cha-Kabuki Under the Sakura

First Cha-Kabuki Under the Sakura

Publish Date
Monday
Photographer

山平敦史

Writer

山平昌子

桜の下で、はじめての茶カブキ

花散らしの雨に挟まれた貴重な晴れ間の一日。今年も花見の野点を開催することができました。

まずは満開の桜に乾杯です。

柄も形も異なる盃から、好きなものを選んで
柄も形も異なる盃から、好きなものを選んで

この日のためにJoiさんがご準備くださった最高ランクの獺祭は、甘やかな香りでお花見の始まりを寿ぎました。

駆けつけてくださった、建築家の三井嶺さんともお酒を酌み交わしました。

建築家 三井嶺さんと
建築家 三井嶺さんと

お茶の前にお菓子をいただきます。今日のお菓子は、「お菓子のらめ田」さん。 地に梅、その上に桃、桜があしらわれたお菓子は、その名も「春のリレー」。リレーで渡されたバトンは、これから八重桜、新緑へ、次の季節につながっていきます。

お菓子のらめ田製「春のリレー」
お菓子のらめ田製「春のリレー」

さて、今日の趣向は茶カブキ。お茶を当てる遊びです。 皆さん、はじめての経験とのこと。 古くは栂尾の茶を当てる闘茶から始まり、賭け事として白熱しすぎて室町幕府から禁止令が出たほどなのだそうです。

まずは試しの茶として、「竹田」と「上林」を味わいます。 実際には違うお茶屋さんのお茶ですが、昔からの茶屋である「竹田」「上林」と呼ぶ習わしが残っています。 その後、それらふたつとは違うお茶「客」を含む3つの本茶を飲んで、「上林」「竹田」「客」を当てるという遊びです。

今回は席入りや、名乗り紙を回す手順を省き、お茶碗もお茶ごとに取り替えるなど、野点に合わせたアレンジを加えました。

茶カブキ用の棗
茶カブキ用の棗

説明はともかく、まずは体験してみましょう!

まずは試茶から。同じ条件でお茶を練る必要があるため、ご亭主役の技量も問われます。

真剣な表情でお茶を練るNaomiさん
真剣な表情でお茶を練るNaomiさん
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味や香り、舌触りなどの感覚を研ぎ澄ませて、記憶します。

感覚を研ぎ澄ませて
感覚を研ぎ澄ませて

感覚に集中すると、葉っぱのざわめく音や、陽の光の温かさ、風が頬に当たる感触などが、急にはっきりと感じられるようでした。

さて、ふたつの試茶の後は、いよいよ本茶です。 正客から本茶所望のお声がけがかかった頃、控えていた執筆者が書き始めました。書き方にも決まりがあるのだそう。

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そして予め配られていた名乗り紙の、これだっと思ったお茶の名前を切り取って、大折据と呼ばれる小箱に入れて行きます。

名乗り紙を切り取って
名乗り紙を切り取って
大折据に入れて回します
大折据に入れて回します

さてさて、一服目の皆さんの回答は… なんとJoiさんだけが「竹田」、他は「客」と、票が割れました!

これが吉と出るか凶と出るか・・。

本茶一服めの結果
本茶一服めの結果

そして二服目は・・ 「あっ違った!」と思っても、一服ごとに札を入れるため、元に戻れないのが茶カブキの難しさです。

三井さんも真剣な表情
三井さんも真剣な表情

全ての札を入れたら、いよいよ正解発表です。ご亭主役が、本茶の棗の内側に書かれた茶屋の名を執筆者に伝えます。

ドヤッっと勢いよく棗を見せてくれるNaomiさん
ドヤッっと勢いよく棗を見せてくれるNaomiさん

なんと、本茶の一服目は、「竹田」。この時点で正解の可能性はJoiさんだけとなりました。

そして二・三服目も順調に正解したJoiさん。見事全問正解です!

💡

Joiさんからの試合後の一言:今回は正客だったので、香りを含め最初に味わうことができるというアドバンテージがありました。もしかすると日本的忖度があった可能性は否定できませんが・・。どちらにしても、初めての茶カブキは勝敗にかかわらず、心愉しく素晴らしい経験でした。

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優勝者にはささやかな賞品が授与されました
優勝者にはささやかな賞品が授与されました

きっと茶室の中よりも難しい、屋外の茶カブキでの見事な勝利が讃えられました。

その後は、代わりばんこにお点前を。 干菓子とともに、 のどかで美しい春の一日を、思い思いに楽しみました。

茶箱のお点前をするMikaさん
茶箱のお点前をするMikaさん
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おすすめのお菓子を持ち寄って
おすすめのお菓子を持ち寄って
茶箱談義にも花が咲きました
茶箱談義にも花が咲きました

さて、Joiさんは三井さんと、何やら相談している様子。 もしかすると来年には、ここに新たな茶室ができるのかも知れません。

また来年も、皆と一緒にこの桜に出会えますように。そんな願いを込めて、今年のお花見は幕を閉じました。

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写真:山平敦史

文:山平昌子